早死にはいやだし、
あまり長生きも困るという
大切なものを
見失った人間の言い草
覚法寺だより 第37号
この夏の東京は、記録的な猛暑になるかと思われたお盆の頃から急に涼しくなり、後半には、記録的冷夏となりました。気候不順の折、皆様、お変わりございませんか。
先日、初めてお参りさせていただいたAさん宅でのことです。Aさんは、元々大谷派のご門徒さんでしたが先代のご住職が亡くなられてから、お寺とは疎遠になってしまわれたそうです。
この度、20数年前に7歳で亡くなられた次女の祥月命日のお参りをさせていただきました。お仏壇の前に座った時、仏飯器(ブッパンキ・仏前にご飯を盛って供える器)や華瓶(ケビョウ・水を入れて樒を挿す)、蝋燭立(ロウソクタテ)と花瓶(カヒン)、鏧(キン・おりん)等の仏具がピッカピカに輝いているのです。
私たち本願寺派(西本願寺)のお仏壇に用いられる仏具の多くは、宣徳(セントク)と呼ばれる茶色の着色をされているので仏飯器など一部を除いて磨くことはありません。大谷派では真鍮製の仏具が多いので時間とともにくすんでしまい時々磨かなければ輝きを失ってしまうのです。
Aさんは、毎月、娘さんの月命日を迎えるにあたって、前日にお磨きをなさっているとのことでした。亡き子を思い出しながら黙々と磨いている姿が目に浮かび、お手次の住職の御教化、亡き子の導きお育てを尊く思ったことです。
何事も簡略化されスピードが求められる時代ですが、たまには心静かにじっくりと仏具を磨きながら過ごすのもちょっとした贅沢なのかもしれません。輝きを取り戻す仏具を前にして何か大切なものを忘れてはいないか、自らを振り返らせていただくひと時を持つことは大事なことだと思います。
覺法寺では、来年1月の本堂完成に向け順調に工事が進んでおります。これから仏具等の準備を進めてまいりますが、いずれ、法要前にお磨きの日を設けるつもりです。一人でも多くの方の手によってお荘厳を整えていきたいと思っております。
合掌
平成27年9月
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